2009年11月26日
別れの準備-6
随分前になるが 朝 8時頃 福井の自宅の電話が鳴った。
” 浜やんか もう あかんワ さよなら ありがとう ”
それだけ言い残して電話は切れた。
京都の友達、A子 ちゃん
僕は会社に行く前 どうしようかとたじろいだ。
今から京都まで車を飛ばしても間に合わない。
すぐ、京都の友達に電話をした。
事情を話して すぐ彼女のところへ駆けつけてくれ と
それでなんとか無事に収まった。
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彼女は 京都 岡崎のアパート 北白川の銀月アパート の頃からの友達で
佐々は 彼女のところへよく遊びにいっていた。
彼女 カナダの離島のコミューン へ独りで行ったときの話ですが
お父さん(福井出身の方でした)に見つかると止められるので
2階の自分の部屋から荷物を外に落とし
玄関からゲタ履いて ちょっと出てくるワ と
カナダまて 行ったそうです.
そんな すごい行動力の持ち主でしたが
僕たちが福井に帰った頃
日本に陶芸を学びに来ていた北欧の人と知り合って
京都の山奥の周山に窯を作り 二人きりでこもることになったせいか
そこで 鬱病になってしまいました。
福井からよく二人のところへ遊びにいきましたが
鬱病も進行し、彼が国に帰ることになったため よけいに悪くなったようで
人にも会えず、外にも出ず 生活保護でなんとか生計をたてていました。
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朝の電話の件は 無事に済みましたが
それからは 佐々と二人で電話をよくかけ 出来るだけ長々とおしゃべりしました。
気心の知れた友達と話しているのが 一番 心が和む と言ってました.
彼女 こんなことを 言ったことがあります。
” いつも 死ぬことばかり考えてた。
そして裏山に登り ずーと川を眺めているの。
ある時 気がついたワ ああ 川の流れの様に
心も流さんといけんのや と ”
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DVD で映画を見た The Bridge というタイトル

ブリッジとは サンフランシスコの ゴールデン・ゲイト・ブリッジ のことですが
この美しい橋を舞台にした 自殺のドキュメンタリー映画でした。
海面までの距離66メーター 自殺者の数1300人以上(世界最多)だそうです。
映画の中で ある若い男の人が言っていたことが印象に残りました。
死ぬことばかり考えていたが 飛び込んだ瞬間に 生きたいと思った
宙を舞いながら助かることを考えた。
頭から突っ込むか、足から突っ込むか と
結局、足から突っ込んで かなりのダメージを受けながらも
命は助かったようです。
映画の中では 自殺する前に よく 携帯電話で 電話をしています。
別れの準備 というより サヨナラの挨拶 のようですが
パソコンでメールを送ってからと言う人もいますし
直接のコミュニケーションが苦手な人や 鬱病の人も多いようです。
でも 亡くなった人は そこで 終わり になりますが
残された人は そこからが 始まりです。
あの時 ああ言っておけば良かった とか ああしてあげてれば とか
表情も言葉も帰って来ない人との 悔いの長い対話 が始まります。
愛していた人や子供だったら どんなに苦しい対話になるかわかりません。
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この映画の監督が特典映像のインタビューで
”どんなに大変でも生きていかなければと思う人と
もう一日だって耐えられないと思う人との
境界線はどこにあるのか”
”この橋では 常に自殺が起きている
白昼に<アメリカの宝>と言える場所でだ
しかも周りには人がいる
公の場で自殺するという行為は 他の自殺と大きく異なる
概して通常は人に見られない場所で自殺する
寮の部屋 浴室 ガレージ 納屋 森 といった場所が多い
だが この橋では人に見られる”
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こちら側の世界 と 向こうの世界
此岸 と 彼岸
この 境界に渡すものとしての 橋
それが この映画のタイトル Bridge の意味だと思う。
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楽しいことは 揮発性で 上に昇っていく
一日のうち楽しいことが一つでもあれば
その日一日は とても楽しく心は軽く舞い上がる。
でも 揮発性 だから そう長くは持たない
一晩寝ると メモリー はリセットされて ゼロになる。
苦しいことは 沈殿し圧縮されていて 重い
だから 一週間は 引き摺ってしまう。
人によっては一生かも知れない。
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ふさぎこんで 死ぬことばかり考えていると その気持ちが
どんどん加速、増幅していって 死 に取り込まれていくようになる。
ブリッジの話も 川の流れ の話もそうですが ある 転換モード を経験すること
そのきっかけは 人 様々 だと思いますが 廻りの私たちにも
お手伝いできることがあればと思います。
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この映画を見て 彼女の電話 のことを憶いだしました。
最近は 電話をしていませんが 年に一度の年賀状は届きます。
Posted by hamabeat at 21:20│Comments(0)
│別れの準備
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