見えない敵
これも久々に改めて見た過去の映像のお話です。
たまたま、古書店で見つけた本。
本の題名は<さまよえるヒーローたち>
副題が<あるベトナム帰還兵> です。
製作 BBC 1987年8月13日 NHK放映
英国BBCだからこそ作れたドキュメンタリーかもしれない。
この本は1987年に放映されたテレビ映像のシナリオというか
ドキュメンタリーの記録ですが
放映後6年もたってからの1993年に出版された本です。
このビデオの録画、過去何度も見ていますが
森で生活するベトナム帰還兵4人の男たちの
怒りをおさえた告白の内容に
強烈な衝撃をおぼえました。
ベトナム戦争がどういう戦争だったのか僕には解りません。
今 振り返ってみて 僕が 思いついたことを書いてみます。
戦争は 敵 との闘いに違いはありませんが
ベトナム戦争以来 見えない敵 との闘いといった様相が
ますます強くなってきています。
このドキュメンタリーのテーマ曲は
映画<ディア・ハンター>のテーマ曲
ジョン・ウィリアムスのギター演奏での
美しく物悲しいメロディーの<カヴァティーナ>です。
ドキュメンタリーに挿入されている映画は
<ランボー>の一場面。
映画<ディア・ハンター>と<ランボー>に
オーバーラップしたドキュメンタリーといえます。
<ディア・ハンター>については別の機会に
詳しく書いてみようと思いますが
長い前半の屈託の無い若者たちの幸せな描写が好きです。
そのあと一転してベトナムの戦場に切り替わりますが
当時の若者達がいきなり戦場に送り出された状況の再現と思われます。
ただ、この映画でベトナムでの内容は<ロシアン・ルーレット>に終始しています。
バイカーのジェイクはこう語ります。
(ディア・ハンターを見てロシアン・ルーレットを俺もやってみたさ。
6分の1の確率は決して高くはない。ベトナムのジャングルの中はそれ以上だ。)
また、水辺をライフルを携え歩きながらブルースが静かに語る
(死を心待ちにしている。生きるのは拷問のような苦しみだ。
弱い人間じゃないから自殺などは考えないが
死が訪れたら喜んで迎えるだろう。)
ベトナム戦争での米軍側の死者および行方不明者の数はおよそ五万八千。
しかし、米国務省の退役軍人担当官の推計では
その倍の十万人にのぼるベトナム帰還兵が自ら命を絶っている。
16や17歳の子供達が過酷に訓練され、敵に対する憎しみを植え付けられ
いきなり即座に飛行機でベトナムのジャングルに放り出される。
ディア・ハンターのマイケルのように正気を保てる人はごく稀に違いない。
敵一人を殺すのに何発の弾を使ったかというデータが
以前読んだ本の中にありました。
数は記憶にありませんが、ベトナム戦争で使用した弾の数は
2つの大戦とは比較にならないくらいの膨大な数値でした。
このことからも解るように
現在ますます 見えない敵 との闘いに
陥っているように思えてなりません。
アメリカが破壊したものは
ベトナムの国土や人々や美しい自然だけでなく
自国の純良な若者達の精神だということを
このドキュメンタリーを見て感じたことです。
では <カヴァティーナ>を聞きながら........
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